最新K-POPサウンドを学びにみんなで韓国旅行にいってきたお話

最新K-POPサウンドを学びにみんなで韓国旅行にいってきたお話

こちらに記事を投稿するのは久しぶりになります。
studio MASS代表の諸石です。

2023/10に、Yamamoto Takumi(以下:山本)、Korenaga Takuro(以下:伊永)、そして私(諸石)で韓国へK-POPの最新の事情を勉強しに行き、それぞれ色々なものを持ち帰れたと思うので、それを皆さんにもシェアできればと思い記事を書いてみたいと思います。

GLMC2023に参加した経緯 ~Yamamoto Takumiの異常な愛情~

参加した経緯がなかなか秀逸なので、まずはそこからお話できればと笑

山本くんは、自分が衝撃を受けた偉大なるミキシングエンジニア、マニーマロキンの背中をずっと追っていいる。毎年のマニーのワークスを把握していることはさることながら、彼がどんな機材を使い、どのインタビューにはどのように答えたか?までを完璧に答えられるハードコアなファン。

そんな彼の日常は、まず、マニーマロキンについての最新情報を調べることからはじまる。
通称、「マロサ」だ。

というのも、マニーマロキン自体は殆ど情報を出さないエンジニアであって、本当にごく稀に何かの掲示板だとかにぽつっとコメントを残したりする程度。だからこそ、調べがいがあるらしい。

いつもの通り、「マロサ」をしていると、画像検索から新着の記事に辿り着く。

そう、あの憧れのマニーマロキンが、お隣韓国にやってくる!
確かに以前1回だけ、マニーマロキンはセミナーをやっていたことがあるが、今回の韓国は物理的距離にして、過去最短。

「会いたい。本当のマニーに会ってみたい・・・だけど、会いたくない・・・。」
愛が本物であるがゆえに、切ない表情で複雑な心情を吐露する山本。

諸石がそれに対して、半ば強引に。
「は?行く一択でしょう。俺も行くわ。」
の一言で参加が決定。
残念ながら諸石は乙女心など理解できない人種。

あっさりと、ツアーすることが決まったのでした。

そこに、あらゆるテクニカルを極め、学習に飢えた伊永氏が加わり、エンジニア3人、それぞれに秘める狙いを持って、韓国に降り立った・・!
そんな経緯であります。

それぞれの思惑

ツアー後に改めて、わざわざ国外までどうしていったのか?
それぞれの思惑についてまとめてみました。

諸石

K-POPは今最も音楽バブルで盛り上がっていて、内容も最先端のエンターテイメントであることは疑いようのない事実。彼らが何を考えて、どのようにして音楽制作をやっているのかを肌で感じ取りたい。

クリスゲリンジャーの存在も大きい。
洋楽のプレイリストを聴いていて、「これは勝てない!」と感じる楽曲のクレジットを見ると、半分ぐらいの打率でクリスゲリンジャーがマスタリングしている。
彼が何を考え、マスターを落としているのか。また、どういうスタンスでマスタリングを行っているのかを明らかにしたかった。

何より、以前僕が尊敬しているマスタリングエンジニアのグレッグカルビ氏にお話しを聞きに渡米したとき、確かに人生が変わった手ごたえがあった。山本くんのその瞬間を見たい。

伊永

前回一人で韓国に行った時、一人だと入店拒否される飲食店が多かった。
サムギョプサルもダメ、ソルロンタンもダメ、結局ホテル近くで寂しく粥を啜るしか無かったのですが、
複数人で行けばもっとお肉や鍋が楽しめると思ったので参加しました。

隙を見て「ポテンツァ」の施術を受けて、顔面を若返らせることができると思った笑

山本

Manny Marroquin。
それ以外の理由は要らない。

GLMC2023とは?

GLMCと聞いてピンと来る人のほうが少ないと思うので、改めてこのイベントについてご紹介しておきたい。

GLMCとは、Gear Lounge Master Classの略。
韓国のプラグインからハードウェアまで様々な音楽機材の代理店を営むGear Lounge社が主体となって開催される勉強セミナーだ。
僕自身、山本に教えてもらって初めて知ったが、実は例年韓国ではその時々の音楽業界のトッププロたちを集めてイベントを行っているらしい。

今回はマロサのおかげで知ることができたが、基本的には韓国国内向けで、海外からの参加については別途問い合わせの上、韓国内の決済システムを経由する必要があった。

この記事では、セミナーの内容を全部公開するのは倫理に反するので、それぞれ3人が印象に残ったことと感想を書いていければと思う。

GLMC2023 DAY1の登壇者

Alawn | Producer, Mix Engineer  NCT 127, KAI, IZTY, IVE, ベクヒョン, MONSTA X, クラビティ, ルセラフィム, パクボム, エイピン, WayV, SuperM 他多数。 

  • アランは21曲のビルボード1位を記録したフランス・リヨン出身の多才なプロデューサー兼ミックスエンジニアです。スヌープ・ドック、グチ・メイン、フロー・ライダ、ボーイズ・トゥ・マンなどの伝説的なアーティストのトラックのリミックスとDJプロジェクトから始まった彼の音楽キャリアは、SMソングキャンプを起点にK-Popに拡大され、パク・ボム、NCT 127、KAI、Ive、WayVなどの多数の有名アーティストとの継続的なコラボレーションを通じて、アジアのトップチャートを席巻するプロデューサーとして位置づけられています

LDNノイズ|プロデューサー EXO、SHINee、ITZY、テヨン、レッドベルベット、トゥワイス、NCT 127、NMIXX、ボア、アストロ、モンスタエックス、シスター、ガールズデイ他多数

  • ロンドンノイズはグレッグ・ボニック、ヘイデン・チェフマンで構成されたイギリス出身のプロデュースチームです。SMソングライティングキャンプを通じてK-Pop市場に参入した彼らは、自分たちだけの魅力的なエレクトロニカサウンド、ディープハウスをベースに音楽を作り上げ、EXO、SHINee、ITZY、テヨン、NCT 127、トゥワイス、ボアなどK-Popを代表する多くのアーティストとのコラボレーションを通じて、ロンドンノイズならではの魅力的なサウンドを継続的に大衆に披露しています。

ビッグサンチョ|Producer ヤミトーンミュージック代表 |Yummy Tone キューブエンターテインメント主任プロデューサー ヒョンア、B2B、(女)アイドル、Apink、CLC、トリプルH、ペンタゴン、フォーメーション、キム・ナムジュ、キサム、チーター、マーマム、ハイライトなど多数

  • ビッグサンチョはプロデュースチームYamiton Musicを率いるリーダーであり、トレンディなK-Popサウンドを披露するプロデューサー、作曲家です。ヒョンア、BTOB、(女)Idols、キム・ナムジュなど数多くのアーティストの音楽をプロデュースした彼は、アーティストの潜在能力を引き出すと同時に、実験的な試みで大胆なサウンドの音楽を披露しており、様々なジャンルに独自のキャラクターを加えた魅力的な音楽世界を構築してきました。

ファン・ヒョン | Producer MonoTree | MonoTree代表プロデューサー オンアンドオフ(ONF)、レッドベルベット、セブンティーン、IVE、オマイガール、今月の少女、ガールフレンド、チョン・スンファン、クォン・ウンビ、テミン、スーパージュニア他多数

  • ファン・ヒョンはプロデューサー、ソングライター、アーティストで構成されたプロデュース及びパブリッシング企業、モノツリーの代表兼チーフミュージックプロデューサーです。オンアンドオフ(ONF)、レッドベルベット、セブンティーン、アイブ、オマイガールなど様々なアーティストのアルバムをプロデュースし、K-Popシーンのスタープロデューサーとして地位を確立した彼は、クラシックをベースに培われた深い音楽的造詣で魅力的でユニークな音楽を披露しています。

DAY1で印象に残ったこと

諸石の感想


ファン・ヒョン「K-POPは侵略されている。」
K-POPに対して、行ってみるまでは世界にドンドン進出していてマジで凄い!カッコイイ!
といった印象を抱いてただけに、結構ショッキングでした。
他の海外作曲家勢がイケイケの雰囲気で出てきたのに比べて、彼だけがどこか重たく、そしてシリアスなオーラを纏っていたのが印象的です。

曰く、どんどんと国外の作家が採用されるようになり、国内の作家の採用率が劇的に近年落ちている・・とのこと。実際にデモを拝聴させていただきましたが、海外作家との差が無い領域に達している達人だからこそ、発言に重みがありました。
「グローバルに進出する。」
その言葉の響き自体はかっこよく、否定しがたいものが昨今あると思います。

ただ、じゃあ、実際にグローバルに攻めていくと何が起こるのか?
それは、グローバルからも当然攻められる・・ということです。
韓国内の音楽産業が最高のバブルを迎えているからこそ、その競争の苛烈さを思い知ることになりました。
よくエンジニアリングについて語るとき、枕詞に「海外では~」というような話が半ば常套文句になっていますが、本当に勝負をしたいなら、そんなことではいけないなと。
自分は自分のバックグラウンドで勝負するしかないわけです。

海外のみんながこうしてるからこうする・・ではなく、私がこう思うからこうする。
そういう強い意志こそが必要だと、強く反省をするきっかけになりました。

日本から見える海外と、その国内。そして海外の国同士でも見える景色はまるで違うことに気づき、あらためて日本の音楽シーンを俯瞰できたような気がします。

ALAWN「正しい音を選べ。」

コンペに勝つために何か秘策はありますか?に対する切り返しだったと記憶してます。
彼はエンジニアとプロデューサーを兼務しているため、どんなサウンドメイキングを語るのか?と興味津々に聴いていたんですが、作業のほとんどを正しい音を選ぶことに没頭しているという部分が深く印象に残りました。
ベースはレイヤリングを駆使する一方で、リズムに対してはかなりあっさりで、そもそも補強が必要なサウンドは選ばない。という哲学のようでした。
理由としては、コンペを開催する側はあり得ない分量を聴いているから、覚えやすいメロディー、そしてぶっ飛ぶサウンドで印象に残らなければ採用されることがないから、といったもの。
LDN NOISEでも触れられていましたが、K-POPのコンペの苛烈さを垣間見ることが出来ました。

伊永の感想


IMSTA FESTA「SUPER TONE[CLEAR]」

イベントに行くことで初めて知ることができた韓国のプラグインメーカー。
ボイスセパレーターとしての能力が非常に高く、そのアルゴリズムを担当者から直接聞くことでとても勉強になリました。
AIを活用したプラグインでもっと表現の幅が広がるようになるといいなと思います。

その他メーカーも現地のトラックメイカーがインストラクターを務めており、
プラグインを含めインターフェイスや代理店の状況・プライベートスタジオなど
韓国の音楽制作事情を伺うことができました。

ALAWN「好きなことを突き詰めてホームを作れ」

彼のセミナーを聞いていると、
結局「好きこそものの上手なれ」に勝るものなしだと感じました。
好きなこと、得意なことを突き詰めて「○○といえば彼だよね」と言われるまで突き詰めた時に
やっと第一線で輝けるようになるということ。そのチャンスを掴み続けることが大事。

同時にALWANの場合好きなことと世界の需要が合致してたから売れたけど、
もし自分の好きと世間の需要が不一致な場合、
いくら良いものを作っていても売れないんだよなーという現実の非情さも再認識しました。

LDN NOISE「同じMIDIから5トラック生成してレイヤーする」

これは結構衝撃的だったかもしれません。
「何かベースに変化を与えたいな、楽曲にフックを作りたいな」と思った時に、
フレーズに劇的な変化を与えたりハモのラインを追加するのではなく、
全く同じMIDIを使って複数音源鳴らして、いい感じの音色をWAVでガンガン書き出して、
レイヤーするという手法を彼らはとっていました。

理屈ではわかるのですが、実際にはなかなかできる操作ではありません。
ちょっと安直すぎるというかプライドが許さないというか笑
でもその処理のおかげで彼らの楽曲は「Memorable Melody」があると評価されているわけです。

帰国後ボーカルの重ね方やサビ前の変化の付け方として彼らの手法をパクっていますが、
概ね高評価を頂けています。ありがたや・・・。

山本の感想


ファンヒョン『95点』
『世界トップの音楽を100点とした時にKpopはいま何点の位置にいると思いますか?』という問いに対して『95点』と即答しており、Kpopというカルチャーに対する自負が感じられたことに驚いたと同時に、続けて『今がピークにあり同じようなムーブメントは今後こないと思う。』という言葉には少し驚かされました。
“世界に聴かれる音楽になったということは、世界も入ってこれるようになってしまった”ということは確かにその通りで今回のセミナーを見てもALAWNやLDN NOISEなど国外プロデューサーが現在のKpopシーンには数多く参入していることがわかりますが、ファンヒョン氏の決してネガティブな意味ではなく、かなり現実的に音楽シーンを見た上でKpopというジャンルに誇りを持ちながら常に新しいことにチャレンジしようとする姿勢に感動しました。

LDN NOISE
特にGregのつくるビートのかっこよさ、強さは確実にあの人間性から来るものなんだろうなと感じたセミナーでした。笑
スクエアのビートの中にシャッフルを混ぜグルーヴを作る手法やいくつものハイハットを重ねて緻密なリズムを組むことも勉強になった。
Chorus(サビ)に向かって盛り上げていきサビで一気に落とすことや、その逆の手法でリスナーの注意を引くということもかなり効果的だということを体感できました。
Spliceなどのサンプルを使用する場合にもそのまま使うのではなく歪みを足すことやピッチを変えるなどで自分たちのシグネチャーサウンドを作っているという話が印象的でした。

GLMC2023 DAY 2の登壇者

キム・チョルスン|ミックスエンジニア SM Entertainment |SM Entertainment ボア、SHINee、テヨン、NCT、エスパ、EXO、レッドベルベット、スーパージュニア、少女時代ほか多数

  • キム・チョルスンはSMエンターテインメント、ブルーオーシャンスタジオのミックスエンジニアです。K-Popの特徴である眩しいビジュアルと強烈なパフォーマンスを構築するために、ディテールと感情を生かし、非常に丁寧に音楽をミックスする彼は、SHINee、テヨン、NCT、エスパなど、世界的に拡大しているK-Pop文化をリードする様々なアーティストのアルバムにミックスを担当し、K-Popサウンドを定義しています。

シン・ボンウォン | Mix Engineer グラブスタジオ|GLAB Studios Stray Kids, ITZY, セブンティーン, TWICE, アイユ, イ・ジソン, CL, DAY6, パク・ジンヨン, プロミスナイン, エイピン, キム・ボムス, 2AM, 2PM 他多数

  • シン・ボンウォンはギアラウンジの傘下スタジオ、グラップスタジオのチーフミキシング&レコーディングエンジニアです。楽器及びボーカルレコーディングからミキシングまで、エンジニアリングに対する彼の豊富な経験を基に現代音楽の方向性と伝統的な音楽の構成要素を調和させ、彼だけの魅力的なサウンドで表現しています。ITZY、イ・ジョンヒョン、アイユ、パク・ジンヨンなどの有名アーティストのアルバムをミックスし、最近ではニュージーンズ、トレジャー、エスパーなどのミュージシャンのDolby Atmos®マルチチャンネルミキシングを担当し、彼の音楽キャリアを広げています。

クリス・ゲーリンガー |Mastering Engineer スターリング・サウンド|Sterling Sound 17回のグラミー賞ノミネート BTS、レディー・ガガ、ドレイク、リアーナ、デュアリパ、ナス、ブラック핑크、ジェイソン・ムラーズ、ハリー・スタイルズ、ルセラフィム他多数

  • クリス・ゲリンガーは米国ナッシュビルに位置する象徴的なマスタリングスタジオ、スターリングサウンドのシニアエンジニアです。ポップ、ロック、ジャズ、ヒップホップ、ワールドミュージック、K-Popなど様々なジャンルに対する深い理解に基づいて驚くべきサウンドを作り出す彼は、レディー・ガガ、リアナ、デュア・リパ、レッド・ベルベット、BTSなどの世界中の有名アーティストのラブコールを受けており、現在も数多くのコラボレーションを通じて独自のマスタリング哲学を開拓しています。

クォン・ナムウ|Mastering Engineer 821サウンド|821 Sound 3回MAMAアワードベストエンジニア アイユ、テヨン、クラッシュ、SHINee、エスパ、ジーコ、トワイス、DPR LIVE、ギュヒョン、ブレイブガールズ、イ・ヒョイ、ペク・ジヨン、ヒョンア、ジーコ、オマイガール、ポルキム他多数

  • クォン・ナムウは、トレンディかつ洗練されたサウンドで多くのクライアントから愛されている821 Soundのマスタリングエンジニアです。クラッシュ、アイユ、ソンミ、テヨン、DPR LIVE、ジコなど様々なジャンルとスタイルを持つアーティストのマスタリングを担当し、2019年、2020年、2021年MAMAアワード3年連続ベストエンジニアを受賞するなど、K-Popを代表するマスタリングエンジニアとしてそのキャリアを確固たるものにしています。

Manny Marroquin | Mix Engineer ララビー・スタジオ|Larrabee Studios 13回のグラミー賞受賞、38回のグラミー賞ノミネート。 Alicia Keys、ブルーノ・マーズ、チャーリー・フーズ、ケンドリック・ラマ、The 1975、ウィークエンド、リアーナ、ラナ・デル・レイ、その他多数。

  • マニー・マロクインはララヴィ・スタジオのオーナーであり、13回のグラミー賞受賞歴を持つミックス・エンジニアです。アーティストやレーベル、プロデューサーのビジョンを最大限に引き上げるためにミックスに彼の技術と創造性を注ぎ込むという彼の音楽哲学に基づいて、イエス、アリーシャ・キス、ジョン・マイヤー、ブルーノ・マーズ、トゥパック、チャーリー・フーズ、ケンドリック・ラマー、フェニックスなど世界最高のアーティストの音楽が彼の指先で完成され、現在も数多くのミュージシャンとコラボレーションし、そのキャリアを続けています。

DAY2で印象に残ったこと

諸石の感想


Chris Gehringer「Im not “Technical Guy”」

心にぶっ刺さりました。
確かに99%のエンジニアは技術論大好き。僕も大好き。

でもそんなことはどうでもいいんだと。とにかく音楽に集中しろ、焦点はそこじゃない。
心で感じられるかどうか、だけなんだよ。

どんな質問にもそう答える彼は、意地悪な見方をすれば無敵論法だともいえます笑
が、それが全て・・という視点に立つと、それ以上言いようがないのも事実。

これまで、「正しい」ということに根拠は必要であり、「正しくなければいけない」といった脅迫観念が多少なりともあったことに気づかされました。

感情の前には、そんなことはどうでもいい。正しいかじゃない、感情が伝わるかなんだ。
確かに言われてみれば、それこそがエンターテイメントの本質ですよね。

音楽というのは正解が無いから面白い。これに異論を唱える人は少ないと思います。
彼は、こまごまとした技術より音楽性に舵を切ったエンジニア。
”Technical Guy”じゃないからこそ、音楽そのものに40年向き合っていたというわけです。
何たる勇気でしょうか。

本質は、音楽の持つ情熱、感情をどう伝えるか。
そしてそれにどう参加できるのか?であることを改めて理解することができました。

キャリア40年のマスタリングエンジニアが伝えるたった一つの真理。
重く受け止めました。
そうであればこそ、マスタリングって一生面白いんだろうな。そう思います。

Manny Marroquin「本物になれ。誰よりも働け。これはライフスタイルの話だね。」

まず、マニーマロキンをみて驚いたのは、派手すぎること。
これまで登壇した方々はスターでありながらも、技術者であったりプロデューサーということで、裏方稼業に沿った雰囲気を持っていたんですが、彼は違いました。

登場した瞬間からロックスターであり、明らかにフロントマン側の人種。
しいて言えば、イーロンマスクに似た派手さ、ウォーキングデッドのニーガン(失礼!)を彷彿とさせる目のキラキラ感をもって登場してました笑
これまで「勉強しよう・・!」といった会場の雰囲気が一転、コールが沸き上がるという謎の事態に。
ほとんど司会の進行に従うことなく3時間の独壇場で哲学を語ってくれました。

色々と教えていただいたのですが、彼もまたエンジニア=技術者という観念は捨てた方が良いと考えていて、技術なんて所詮はツールなんだからそんなに大事ではなく、直感と感情で音楽に触れることの大切さを説いていました。
我々は、勉強熱心すぎるあまりついついツールに踊らされてしまうわけですが、軸足はやはりそこじゃないということなんですね。

で、その中で。
「どうすれば音楽で成功できますか?」
ある意味切実な問いが参加者からありました。
これに対しての彼の答えが深く刺さりました。

さも、そんなこと簡単さ・・!といわんばかりの不敵さで、ニヤニヤ笑みを浮かべつつ。
「Point 1 本物になれ」
「Point 2 誰よりも働け」
「これだけさ。これはライフスタイルの話だね。」と。

しびれるほどカッコイイし、カッコつけすぎなわけですが、、完全にK.O.されました。
でも、冷静に考えるとなかなか厳しいこと言ってますよね。

「本物である。」そう自負するためには、本物である自分に嘘をつかない選択をし続けなくてはいけないわけで、そこに一切の嘘は許されないわけです。
その日から、「今、自分は本物になれているのかな・・?」そういう問いを抱えて生きています。
襟を正さなければ!!そう、感じた瞬間でした。

伊永の感想


GLAB STUDIO「ボーカルのコンプをCL1Bから1176にしたときにK-POPが変わった」
常日頃から言語とコンプの扱いに対して興味がありました。
海外のミックスに関する書籍や動画を学んで実践しても日本語にハマらないのはなぜだろうという疑問が
あったのですが、この発言によって疑問が解決しました。

CL1Bはどれかといえばのっぺりかかるコンプで音像が全体的に奥にいくのですが、
それが子音で聞かせる韓国語とはミスマッチだったという話ですね。
子音言語の韓国語をしっかり眼前に張り付く音像で録音するためには、
1176という速いアタックタイムのコンプが必須だったということです。

逆にいえば母音で押していく日本語には日本語にあった録音の仕方・コンプの選定が必要ということ。
自分のボーカルレコーディングのチェインを見直す良いきっかけになりました。

Chris Gehringer「Feel Emotion, Feel Vibe」
セミナー中何度も何度も彼が繰り返し発言していました。
「まだマスタリングエンジニアとして駆け出しなんだけど、どうやって部屋作りしたらいい?」
「クリスも駆け出しの頃は苦労したと思うけど、今の手法に辿り着く前はどうしてた?」
「K-POPのマスタリングで他のジャンルと異なる意識するポイントはある?」などの質問全てに
「Feel Emotion, Feel Vibe」と答えていました笑
実際は血の滲むような努力をされているし、ルームチューニングも細かく説明することはできると思うんですが、
まず第一にその思想を絶対に忘れるなっていうことですよね・・・。

あくまでプラグインや実際の操作は結果論に過ぎないってことですね。

Manny Marroquin「NS10はクソみたいな音だから最高」
実務という面ではこの発言に一番影響を受けたと思います。
帰ってから自宅の環境にもNS10MのIRデータを入れてモニター周り改造しましたし。

確かに現代のアレンジや音源から考えると10Mはレンジも狭いですし、
クソみたいな音だと言われても仕方ないかもしれないんですが、
逆にクソみたいなスピーカーでカッコよければ何で聞いてもカッコいいんですよね・・・。
そこに改めて気付かされました。

そしてみんなが10Mを離れていく中使い続けることで唯一無二のマニーの個性も出せるってことですよね。

山本の感想


キム・チョルスン
サウンドメイクは80%レコーディング、15%はエディット、残り5%がミックスで作っているとのこと。
楽曲をABCセクションごとにそれぞれ別の曲をミックスをしているイメージで行うことでリスナーに予想させない展開や驚きを演出しているということはとても参考になりました。
今は音楽を単体で楽しむというより映像と音楽で『体感するもの』に変わってきているのでミックス前にMVをもらい映像に合わせたミックスをすることも多いという話も驚きました。

Chris Gehringer
『Feel Vibe』実際に目の前の彼がこの言葉を発する説得力の強さは強烈でした。
位相のズレや副作用で生じる歪みに対しても『その結果その音に心が動いたなら何も問題ない』と言い切る姿に、そうだよなと思いつつもマスタリングに限らずどうしても自分が日々音楽と向き合う中で知識が増えるほど無意識にテクニカルな部分への意識が強くなってしまうことに対して『技術者になるな』という彼の言葉はとても刺さった。

Manny Marroquin。
正直なところその日会場にいた誰よりも彼のことを下調べした自信はあったので、ある種答え合わせに近い想いで臨んだセミナーでした。
彼の実際のミキシングの手順において1番驚いたことは、自分のコンフォートゾーンを大事にするためにおこなわれていた手法。
具体的には”順にフェーダーを上げていく際に自分がそのトラックに対してポジティブに感じられないトラックはすぐにミュートする”ということ。自分がGoodと感じるトラックのみでまずはミックスを進めていく、というコンフォートゾーンの確立の仕方は当然といえば当然ではあるが驚きました。
彼は周波数を感情として捉えていることは有名ですが、ミキシングのテクニックの部分に関しては特別難しいことは彼はほとんどしていないこともわかった。
彼が受けたインタビュー記事でテクニカルな部分に言及することがほとんどない理由も実際に目の当たりにして納得できた気がする。

“make sound good, make feel good.”という彼の言葉の説得力を痛感させられた時間だった。

エピローグ

2日間のセミナーが終わり、諸石は山本がどんな表情をして戻ってくるかを、喫煙所で楽しみに待つ。
セミナー初日でさえ、マニーマロキン本人とどう対峙していいのか?緊張でモジモジしていた青年がどんな風にこの機会をうけとめるのだろうか。

「いや~~終わってしまいましたね。」
「僕、もうマロサは卒業しようと思います。」

そう語る山本の表情は妙に晴れ晴れとしていて、澄んだ目をしていた。
そうだよ。その表情が見たかった。
ニヤニヤしつつVapeを一服する。

誰しも憧れの人はいる。どんなに焦がれてもその人自身になることはできない。
でも、自分が自分自身になることはいつだって出来る。

「じゃあ、今日がエンジニアとしての誕生日だな。お祝いしなきゃだね。」

そんな会話をしながら会場を後にしました。

なお、伊永氏は地元の料理に舌鼓を打ちご満悦の様子でした。
「ポテンツァ」はまた次の訪韓でチャレンジする・・・とのことです。

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