Column

洋楽エンジニアから勉強するマスタリングの考え方、Tips、機材など -Heba Kadry編-

DeepL様様で翻訳→解説シリーズ始めました。


こんにちは。 Studio mass マスタリングエンジニア Soushi Mizunoです。

最近massエンジニアLINE内で海外エンジニアによる解説などの

Youtubeの字幕を抽出して

ちょっと整えてDeepLに放り込んだらそれなりに読める日本語になるぞ

と話題になっておりまして、

 

う〜ん?deepL有料版あるなぁ30日無料、文字数制限解除...

せや!最近大好きなHeba Kadryさんのインタビュー和訳したろ!

と、いう事で初めてみました。




Heba Kadryさんは

2015年あたりからBjork,Slowdive,Lightningbolt,坂本龍一,

Beach House,Shura,Deer Hunter,Prefuse 73などのマスタリングをしており、

2020年現在も多くのアーティストたちに仕事を任される旬のすごい人。

筆者は今年のYaejiのアルバムのマスタリングに衝撃を受け、

いい音だな〜と思って聴いてたある曲がたまたま

Mastered by Heba Kadryだったりが重なって

それ以来この方のマスタリングを追っていました。





ちなみに筆者の英語力は、

ハーイ元気? 元気やで〜
15ポンドです、バッグいる?いらない〜
コーヒーはミルクと砂糖両方入れて(何故かいつもここで笑われる)
あっちのギター下げて、こっちのボーカル上げて!

が出来る程度で、長い文章を読むのはとても遅く疲れます。

DeepLが登場してくれてとても有り難いです。

 

彼女のマスタリング作品を集めたプレイリストも作りましたので、 是非

聴きながら読んでみてください。

もくじ

 

  • DeepL使用上の注意点
  • 今回の参照元サイト一覧
  • Heba Kadry どんな人?
  • 音の印象、特徴 (個人の感想です!)
  • マスタリングの考え方
  • その他面白かった返答
  • 使用機材
  • あとがき

 

DeepL翻訳使用上の注意点

 

基本的には個人の範囲内で楽しむのは自由だそうです。

しかしこういった記事や人目に触れる媒体では注意が必要。

日本語/英語関係なく転載はダメです。

 

調べたところ英語記事の引用には

著作権に付帯する翻訳権というものの問題があるらしく、

日本語記事と違って引用すらも許されない場合があると。

 

という事でこのシリーズでは翻訳元の記事ソースを挙げ、

筆者がそれらを読んだ上でまとめ、

色々と書いていこうと思います。

 

更新頻度、更新回数は不明です。

やり始めてみると読み漁るの面白かったり感動したりするので

1回で終わりたくはないですけどね…

 

今回の参照元サイト一覧


Artist interview: Heba Kadry - Magix

https://www.magix.com/int/magazine/music/heba-kadry/


On music and community by TheCreativeIndependent

https://thecreativeindependent.com/people/mastering-engineer-heba-kadry-on-music-and-community/



Heba Kadry interview by Reverb

https://reverb.com/news/interview-heba-kadry-on-mastering-as-a-creative-act


20 Questions With Heba Kadry of Timeless Mastering by Vintageking

https://vintageking.com/blog/2017/08/heba-kadry-timeless-mastering/



Mastering in the Moment by mixonline.com

https://www.mixonline.com/recording/mastering-in-the-moment

 

 

Heba Kadry どんな人?


HP:
https://www.hebakadry.com/


wikipedia:
https://en.wikipedia.org/wiki/Heba_Kadry



エジプト産まれ。母国ではジングル制作の仕事をしており、

その過程でオーディオについてもっと学ばなければいけない、と思ったそう。

エジプトでは学ぶ方法が無い、
という事で最初はテキサス州ヒューストンに移り、
スタジオマネージャーをしながらレコーディングとミキシングを学んだものの、

自分の個性にマッチしていないと思いマスタリングの道に進みます。


ニューヨークのマスタリングスタジオでスタジオマネージャーをしつつ
空き時間に友人の作品を無償でマスタリングしたりと独学でマスタリングを学び、
クライアントが増え2013年、Timeless Masteringに移籍。


移籍後徐々に著名なアーティストの依頼が増えたようで
2015年あたりから

Beach House, Prefuze 73, Lightning Bolt, Alex G

などの普通に目にするタイトルが散在してきます。



その後一気に注目を集めたであろうタイトルが、

・2016年公開アカデミー賞 作曲賞、ボストン映画批評家協会 音楽賞
 を受賞した映画Jackieサウンドトラック、

・2017年Slowdiveの約22年振りのセルフタイトルアルバム、

・BjorkのUtopia(ミキシングでの参加)。



2017年はキャリアをスタートしてちょうど10年にあたる年ですが、

ヘバカドリーさん自身"最初の10年は人生の中で最も過酷な時期だった"

という旨の発言をしています。



この辺りを期にやっと仕事が安定したと見え、

2019年 Timeless Masteringを離れブルックリンに自分のスタジオを設立。

2020年に入っても素晴らしい作品を排出し続けてます。


大のシンセ好き、またブライアンイーノの大ファンであるらしく、
好きなブライアンイーノのアルバムはとの質問には
難しいけど、1つ選ぶとしたらRobert Frippと共作のNo Pussyfooting
と答えています。


音の印象、特徴(個人の感想です!)

 

基本的にトーンはダークめで、痛い部分が無く深みが強い暖かい音。
どことなく箱鳴り感のある(ミッドのふくよかさゆえ?)

作品が多いような気がします。

 

そのダークさ、ふくよかさに対してダイナミクス面の押し出し感、
歪み(ハーモニクス)で抜け感を演出してバランスを取っているような印象がある。

 

ここ1〜2年の作品では特にハーモニクスとローエンド〜ローミッドの

ダイナミクス制御が絶妙で(Yaejiでやられました。↑是非聞いて!↑)、
現代的な空間の広さとスッキリ感、ホログラフィック感を持ちつつ

パワーと抜けのあるとても最高で好きな音。


自分のスタジオを持って覚醒した感ある。

 

正直ここしばらく大きな指針にしてる音であり、

最近自分が手がけたマスタリングは多分に影響を受けたものになっております。

 

 

マスタリングの考え方

 

いくつかのインタビューの中で、




”カメレオンのようなエンジニアでありたい”




”1種類の事しかしないマスタリングエンジニアにはなりたくない”


"(エンジニアとして最も良く使うスキルは?との質問に対して)

直感を1番に使います。バランスを変えたり特定の要素を前面に押し出したり。

非常にクリエイティヴな選択をしてる時もあります。

例えばあるアルバムではオープンリールを回しながら

アーティストにその場でピッチを変更してもらったり”

 

という旨の発言をしており、

マスタリングエンジニアという概念に縛られず(あるいは概念を拡張して)、
その音楽が必要としている事を感じ取り、

時には曲の内容そのものの編集を行うフレキシブルさ、

柔軟なエンジニアリングが考え方の中心にあるようです。

 

 

実例としてビョークUtopiaのセッションでは、

当初はマスタリングとミックスの間であるステムミックス/サブミックス担当として参加し、

それが徐々にマルチトラックになり、最終的には半年間を要するミキシングを担当。

エディットの過程でステレオトラック1つにまとまってしまっていた
ビートをトランジェント毎に分解し、

SequoiaのオブジェクトエディタでEQやその他エフェクトを自動化して処理した。

と語っていたり、

他のあるマスタリングでは曲の最後にリバーブの尾を伸ばすエフェクトを追加したりした事もあるそう。

 

 

他に特徴的な面では、

マスタリングにおいてもSequoiaのスナップショット

→オブジェクトエディタを活用して

セクション毎にプラグインエフェクトの設定を変えたりしているようで、

どの記事を読んでいてもその考え方の柔軟さが見て取れます。





また、アナログ機材/プラグインに対する考え方としては、

アナログ機材は非常に重要。触覚的な機能が大好き。

一日中画面を見ていると脳が偏ってしまう。

聴覚に集中できるし、感覚も研ぎ澄まされる。

だけどアナログ至上主義ではない。

最近のプラグインは素晴らしい音だし、これからもどんどん良くなっていくと思う。
お気に入りのプラグインEQはDMG EQuilibrium.



個人的にはITBでマスタリングする事は無い。

ITBで仕事をしている時は、アナログよりはるかに効率的で機能的なのに、出来上がったものを評価できない。

D/A接続の前で音を削り出す用途の方がはるかに効果的だと感じてる。



ITBでのミキシングが増えたので、マスタリングが色付けや調和をもたらす事への期待が高まってる。

ITBミックスのサウンドはどんどん良くなってるが、2mixバスに対してはまだ何かが足りない気がする。

(ITBミックスが主流になる)以前は透明度の高いアウトボードを選んでいたが、

今は色付けのあるEQやコンプレッサーを使う事が増えてきた。

しかし、プロデューサやアーティスト、プロジェクトが何を望んでるかにもよるので、

大切なのは彼らがマスタリングで何を達成したいのかを理解する事。



と語っています。

アナログ機材に対するリスペクトや信頼を持ちつつ、
あくまで必要だから使う。

フラットな視点を持っているからこそまだフルITBには移行できない、

という感覚なのではないでしょうか。


その他面白かった返答

 

  • (マスタリングをして)プロジェクトが完成したとどうやって理解する?
→ある意味、終わることはない。

 時間とお金と期限の問題がなければ、人はいつまでも手を加える。

 究極的にはマスタリングをして彼らにそれを送り、

  それに対して最高な気分になり、

  彼らの反応も予想を超えたものであったという感じだった時、

  何か終わったと思いたい。

 

  • お金について

→自分の好きな音楽をマスタリングしたいけど、

  たいていの本当に好きな音楽は予算のない人たちが作ったもの。

  できるだけアナログ機材を使って仕事をしたいがそれにはお金が
  かかる。

  その中間を見つけるのがとても大変。


  どうすれば破産せずに大好きなアーティストの予算に合わせて仕事が出
  来るのか。

  大きな仕事を続けたいという野心もあるが、

  エンジニアとしての私を作ったのはそれらの(予算の無い人たちが作っ
  た)もの。

  最初はThrill Jockey Recordsの仕事をタダでやった。

  彼らに予算は無いけど本当に良い仕事をしてる。

  それが出発点だった。

  小さなレーベルが全く無名の私にチャンスをくれた。

  音楽コミュニティを存続させる事が重要。

  コミュニティがしっかりしてないと生き残れないと思う。

 

 

  • リスニング環境によっての音の差異への配慮について。
→自分の部屋でできる限り素晴らしいサウンドを作ることが目標。  
 
 全ての環境をカバーは出来ない。

割り切った答え。 もちろんハイスペックなモニター環境ありきの話ではありますが、この考え方と使用しているスピーカーの組み合わせが あの特徴的な音を作り出してる可能性は十分にあるな、と個人的に思います。

 

  • ラウドネスウォーについて
→特定のLUFSを目標にしたりしない。
 
 アーティストが求めるものに合わせる。

 大音量のレコードが疲れるのは分かっているが、

 ダイナミクスを取り締まるというのは馬鹿げた概念だ。

 

 

  • 自動マスタリングサービスについて
 →私はファンではないが、人々がこういったサービスを選ぶのは理解できる。

 今の所アルバム全体を1つのまとまりとしてマスタリング出来ないよね。

 人間関係や音楽が私たちにもたらす感情などをアルゴリズムで置きかえることは出来ない。

 

使用機材

 

スピーカー  Egglestonworks  Andra I

ADコンバーター Lavry Gold AD 122 MK3

DAW  Magix Sequoia


オープンリール John McEntire ATR 102 1/2 "1/4 "
 何万ドルも使って直したそう。


主なアウトボード

Avalon 747SP

Pendulum audio PL-2 Limitter

GML 2030

AMS/Neve 33609/C

Sontec 432 C/9
---ハイエンドの拡張性が無限大。このEQはマスタリングの世界を1台で変えてしまった。

dangerous Audio BAX EQ

Manley Masiive Passive

Rupert Neve Designs Portico2 Master Buss Processor

TC Electronic M5000
---90年代的なメタリックなシューゲイズの壁のようなサウンドを求める時に使う
 
など。


アナログ/プラグイン比率は8:2くらい。



コンプレッサーを一つしか使えなら?
  --GML 2030
  (コレをバイパスしてマスタリングした事は無いよ、だそう!)

コレ無しでは生きていけないと思うものは?
  --Sontec 432 C/9

 

 

プラグイン

---DMG Audioが大好き。かなりの数使ってる。
     UAD Sonnoxリミッター、
     UAD Fairchild Legacy     Klanghelm MJUCコンプレッサーなどがお気に入り。
     ↑筆者が(確か)初めて買ったプラグインなので嬉しい。

 

ディエッサーにこだわってると言っていた。
ミックス全体にかかると不自然な音になり活気が失われるから、
歯擦音は個別に処理したい。
DMG EssenceなどのディエッサーとEQで作った
いくつかのチェインをスナップショットに保存し、
オブジェクトエディタで個別に処理する。

 

あとがき

 

だいぶ長くなってしまった気がします。

ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。


2回目以降この文量で続けられるか微妙なところですが、

回数を重ねて色んなエンジニアの考え方や
手法の違いが明確になっていったら面白いですね。


 

コレを読んでHeba Kadryさんにマスタリングを頼みたくなった方。

是非頼んでみましょう。

この方の考え方であれば、

アマチュア、プロ、関係なく受け入れてくれるはずです。

(スケジュールが合えば、ですが笑)




インタビューを読んで、

人と人の間で産まれるストーリーや、

人に会い、話し、同じ空間でコミュニケーションを取る事で産まれる芸術は
やっぱりあるよね。大事だよね。と思いました。


そういった作品作りをしたい、経験をしたいと思った方は、

是非自分の足の届く場所にあるマスタリングスタジオをチェックしてみてください。

そして願わくばそれがStudio massであれば、と思います。

 


マスタリングじゃなくても この音どう思います?とか、

この曲なんか足りないような とか

そういう相談でも全く構いません。

筆者自身、専門はマスタリングですが、

プロジェクトの形によってはrecも作曲もトラック制作もミキシングもしますし、

歌も作詞も(たまに)やります。

ギターも弾きます。

さぁこれからドラム録るぞって時にそのハイハット倍にした方が良く無い!?
と言って試してもらった事や、

自分でコンガを持って来て叩いた事もあります笑

 

とりあえずコミュニケーションを取ってみて、

それは僕の仕事だねという事になれば料金を頂いて仕事をする。

そんな感覚でより良い音楽を産み出して行けたら最高じゃないですか!



Heba Kadryさんも強調していた事ですが、

ローカルやインデペンデントなものが無くなれば

音楽の成長は無くなります。

大きな売上を挙げるスターの後ろには必ずそれを支える文化や小さなアイディア、

それらを産み出すコミュニティがあります。

それを支えていきたいと思っています。

お力になれる事があればなんでもご相談ください。



お問い合わせはこちら

 

 

最後に今回の記事の参考資料を読んでいて胸を打たれた

Heba Kadryさんの発言を原文で置いておきます。

是非deepLで翻訳してみてください。

 

"If you’re working on a record where the person is wonderful 
to be around and they inspire you and you see in them what 
inspires them about their music and you feel that, then you 
become infected by their passion.
It makes you actually work harder because you really want to 
please them.
You really want them to be happy.
Music is people. It’s all about people."
                       __ Heba Kadry, On music and community 
                                   by TheCreativeIndependent

ABOUT ME
soushimizuno
1993年、京都生まれ、静岡育ち。 ハードロックを愛するギタリストの父(青年時腰まで届く長髪)とクラシックロックを愛するボーカル講師の母(ジャニスジョップリン似)を持ち、 ランディローズの命日に産まれました。 幼少期からピアノやギターを教えられたものの教えられるという事自体を嫌い挫折、 中学時代に気を取り直して独学でギターを習得。 カセットテープレコーダーを2台使いノイズまみれになりながらオリジナル楽曲を多重録音するなど充実した日々を過ごす。 2016年 崎山蒼志氏率いるバンドKids Aのレコーディングをきっかけにエンジニア業を開始。 2017年ライブハウスKIRCHHERRオーナー就任後も同店でのレコーディングを行い続ける。 現在はStudio MASSパートナーとしてミックス/マスタリングを担当しています。 -実績- ・ユニバーサルミュージック所属 Aoi Mizuno "BEETHOVEN -Must It Be? It Still Must Be-"マスタリング ・ライブハウスKIRCHHERRとしてdevonair, plasma club, supermourning, ピンクロリータジュリエッツなど10バンド以上のレコーディング~マスタリング ・Kids A(崎山蒼志) "潜水/午後、暗幕"レコーディング~マスタリング ・rowbai “CHARCOAL"などサウンドプロデュース~マスタリング ・The Tateとして向井太一 "wonderland"などインディー時トラックメイク ・小園美樹 "I-君の宝物"作曲~マスタリング/ギター講師 ・木村仁美 "in the pool"など作曲プロデュース~マスタリング ・TVCM”ポンデケージョ"、遠鉄リフォームなど楽曲提供 ・(株)SCM “自律神経を整えるための音楽" “カフェシリーズ" "極上JAZZシリーズ" など20タイトル前後マスタリング ・Relaxing BGM Station アンビエント作曲、ミキシング、マスタリング
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